小さな虫が目の中に目についてきにかかる。
虫の羽は硬く光沢があるらしく白く一点光ってそこから彼のからだの輪郭をたどることができる。
虫はひたすらわたしの虹彩の縁をぐるぐると廻っていっこうに飛び上ろうとしない。どうやら底にたまった油でも舐めているらしい。
目の中でそうして虫が歩きまわっているのでわたしは気が散って仕方がない。
いずれ飛び立つだろうとは思えど、いつ彼がわたしのやわらかな目玉を食い散らかして大切な水晶体をえぐりだしてしまうか知れない。
目の中に指を突っ込む訳にもゆかず、ああ、もどかしい。ああ、気がじれる。