はこには

好きな相手の左頬には小さく連なったほくろがある。
それに気が付いたのは顔を近づけるような付き合いになってからだ。
わたしはそれを星座に似ていると思う。
ほくろに意味は無い。だからわたしの星座にしたっていいはずだ。
(もっと言えば星座にだって意味はない。星に意味はない。星は在るだけだ。)
わたしの左腕に平行に走るいくつもの白っぽい皮膚の突っ張りを嫌う人も世の中けっこういるだろう。
だけどたとえばそれがわたしにはもう見慣れた身体の一部という存在だからそれこそほくろみたいなものだ。
過去に意味はない。
傷跡に意味はない。
そしてすべてのものに意味があり、すべてのものに意味がない。

世の中のすべてのもの、つまりすべての無意味なものに自分で意味付けして自分だけの箱庭で生きてゆきたい。
無意味なものが好きだよ。用意された意味はあんま面白くない。
イルミネーションも観覧車もそれだけではロマンチックでなんてなくてただ電気が無駄なだけだ。木も熱そうだし。
そういう他愛ないものをみてもつまらなくなくて、はしゃげるような相手といるってことをみんな祝っているってこと。
無意味なものが好きだよ。
すべてに意味づけできるわたしは神様だよ。
わたしを幸福にできる神様はわたしだけだよ。
わたしを幸福にする神様のわたしを、わたしは大好きだよ。