妊娠している。お腹はスイカくらいの大きさに、なだらかに膨らんでいる。その程度なので、まだ学校の人たちには気が付かれていない。
おなかがいたくなったので学校を休んだ。欠課が六つつくのは痛いが、うまくすれば妊娠を知られないうちに出産することができるかもしれない。
家は酒蔵だった。
腹痛は陣痛ではなく、やがておさまり、子供は産まれなかった。母親は私に、まだ五ヶ月と五日なのだから当然よ、五ヶ月から十ヶ月が出産の期間だからといって、そうすぐ産まれたりしないわよ。と言って、わたしの部屋から去っていった。
わたしは焦っていた。
暗い気持ちでそのままベッドに身を横たえていると、わたしを妊娠させた男がやってきて、謝罪しながら添い寝してくれる。痩せた年上の男で、ウェーブがかかった硬い白髪がきれいで、好きだと思った。


多摩川のほとりを母と歩いている。
わたしはまだ妊娠していたかもしれなかった。
川はとても幅が広くて、ところどころが沼のようになっていたり、白く濁った水がたまっていたりして、汚かった。
水が白いところで泳ぐのはやめなさい、と母が言う。
わたしは水がきれいな場所を探して、はだしで、汚い湿地帯を歩いた。
気持ちが悪かった。


ハイソックスのポイントを、両方内側にして履いてしまっている。ポイントが両側にあるタイプかと思って確認してみるが、やはり鮮やかな水色のポイントが左右ともに内側にきている。