虫2

真夜中小さな明かりをつけて文庫本を読んでいて気がつくと、ページの上のところに小蝿くらいの大きさの、小虫というには大きな虫がとまっていた。ページをめくって本を読み続けてもいなくなる気配がないので放っておいた。本を読み進んでゆくにつれて虫のとまっている本の上部の幅が狭くなってきたので、シーツの上へ指で追って、移した。指で触れても、飛ぼうとも逃げようとしなかった。そのままずっと本を読んでいたけれどシーツの皺にずっと虫はいた。電気をつけているからきっといつづけるのだろうと思って、電気を消してねむった。眠ってからしばらくして地震が起きて、これが地震ではなく、自分のベッドだけが揺れているのだったら、というぞっとしない想像をしてしまって慌てて電気をつけると、虫がまだシーツの上にいたのですこし安心した。朝にはさすがに虫はいなくなっていた。わたしのひどい寝相に頼むからつぶされていないでくれよと思う。