のどぼとけ

あるところにわかいおんなのこがすんでいました。
おんなのこはじぶんがひとりぼっちで、さびしいとおもっていました。
あるひおんなのこは、わきのしたにおおきなおできができているのをみつけました。
まいにちおできはおおきくなってゆきましたが、ふしぎなことにいたくもかゆくもないのでした。
みっかたって、おんなのこのわきのしたのおできから、ちいさな、ぞうげにほったような、ほとけさまがでてきました。
ほとけさまはちいさいくせに、ひとつだけくちをきけました。
「はい、わたしが、のどぼとけですよ」
おんなのこはおどろいて、おしゃかさまというのもわきのしたからうまれてきたというし、これはきっとえんぎのいいものなんだわ、と思って、ほとけさまをだいじにしました。
まいあさ、おんなのこのめがさめるたびに、ほとけさまは
「はい、わたしが、のどぼとけですよ」
とおんなのこにくりかえしました。
おんなのこはじぶんがひとりぼっちではないきがして、さみしくなくなりました。
あるひ、おんなのこは、ふとももにおできができているのをみつけました。
みっかたつと、やはりほとけさまがでてきて、
「はい、わたしが、のどぼとけですよ」
といいました。
おんなのこは、さきにでてきたほとけさまといっしょに、そのほとけさまもだいじにしました。
すると、こんどはくびのうしろにほとけさまのおできができているのにきがつきました。
ひだりうでにもおできができていました。
みっかたたないうちに、ふたりのほとけさまがおんなのこのからだからでてきました。
そんなことがつづいて、おんなのこのからだは、おできだらけになってしまいました。
「はい、わたしが、のどぼとけですよ」
というこえが、おできのなかからきこえてきます。
ほとけさまはつぎつぎとでてきて、おんなのこがあさめをさますと、こえをそろえてこういいます。
「はい、わたしが、のどぼとけですよ」
おんなのこのおうちは、ほとけさまでいっぱいになりました。
おんなのこは、そのうちに、ほとけさまがからだのなかにいっぱいになって、うごけなくなってしまいました。
からだはおできでぼこぼこになってしまって、それがおんなのこだったとはもうだれもわかりません。
ほとけさまはどんどんでてきます。
おんなのこはもうぜんぜんさみしくありませんでした。
たくさんのほとけさまが、
「はい、わたしが、のどぼとけですよ」
といってくれるからです。
おんなのこは、くちからほとけさまをはきだすようになっていました。
すると、くちから、ほとけさまといっしょにいとのようなものがでてきます。
おんなのこはきゅうに、ねむたくてしかたがなくなりました。
おんなのこはむしのようにまゆをつくりました。
まゆのまわりには、みまもるようにほとけさまがたくさんつみあがっていました。
そしてそのまゆは、けっしてかえることがないのでした。
めでたし、めでたし。