夢日記

4/15・朝
前半は忘れてしまった。
まるで新築の家の中のような廊下を歩いている。けれどそこが屋外だとわたしは知っている。(屋根はあって、出入口に扉はなく、つまりアーケードか通路のようなものだ。)床は明るい色のフローリングで、壁は真っ白だった。人の家に土足で踏み込んでいるようだった。
その廊下を進んでゆくと、右手に分かれ道がある。ここの地面は土で、屋外のようだ。上り坂に墓石が無数にたっていて、その上にはそれぞれ猫が鎮座している。無数の墓と無数の猫。それもおそらくすべてが全く同じ模様の三毛猫で、墓の大きさに合わせて大きいもの小さいものがそれぞれいる。子猫と成猫、というのではなく、縮尺が異なる同じ猫なのだった。墓はどこまでも続くようにある。暗くてよくわからないが、どうやら坂の上にはお寺があるようだった。わたしはそちらへゆこうとするのだけれど、その道へ一歩足を踏み入れると、尋常でない数の蚊がうなりながら飛んできて、びっしりとわたしの腕を刺す。慌てて元の廊下へ引き返すと、蚊は追ってこない。わたしの腕はぶくぶくに腫れ上がって痒くなった。これでは進めないと居間のようなところへ取ってかえって、蚊を駆除するスプレーを持って、ふたたびそこへわけいっていった。スプレーが、お風呂につかう洗剤のように、泡状になってしか出てこず、それが墓にかかるので、墓の管理人に怒られるのでは、と心配になって、あれこれしていると、うまい具合に噴霧に調節することができた。ひと吹きするたびに面白いように蚊が落ちる。ここにいる猫たちはよく平気なものだ、と思う。
坂の上にはやはり寺院があったが、なんだか仏教美術館のようでもある。仏様やら、古い文書やらそういったものがガラスケースの中に陳列されていて入場料を取られた。カウンターに座った和尚に、そのスプレーはずいぶん重宝ですね、麓にわたしも買いにゆかないと。といわれ、どうしてか親密になる。

4/16・朝
両親と、草木も鬱蒼としてうす暗い、貯水池のようなところのほとりに来ている。どうやら軽井沢のようだ。松林の中、「ブタ村」とかかれた看板を下ったところにその貯水池はある。貯水池のまわりは石のブロックが積んであって人工的に区切られている。
母親は「松の枝を一枝取ってくる」といって貯水池の中へ入っていく。どうして松の枝を取りに行くのか、そしてどうしてそのために池に入るのかわたしはわからなかったが父親とそれを見送る。母親は貯水池の奥の方にある水路へ向かって池の中を歩いてゆく。池の深さは母親の腰より多少高いくらいだ。みていると、母親のうしろに大きなさかながずっとついているのがみえる。色は、井の頭公園にいる鯉のように、朱色が半ば帰化して墨色の混じった暗い朱色だ。その背中が水面に出て母親を追っている。気のせいかな、と思ったがどうやら魚ははっきりと意志をもって母親を追っているようだ。
「カワマスだ!カワマスがついてきてるよ、おかあさん!」とわたしがいうと、母親は「あら、気が付いていなかったの、家をでたときからずっとついてきているわよ。十二匹くらい。」という。わたしは家(実際には一軒家だが、夢の中の回想ではグレーに塗られた扉のマンションの一室だった。)を出る時のことを思い出したが、だいたいのところ、家は陸地にあるのだし、地下水路がなにかで追ってきたとか、そういったことなのか、と考える。わたしはなぜか、そのさかなが「カワマス」という種類のさかなであることを、知っている。(たぶんそんなさかなは実際にはいない。)
と、母親の前に警官がやってきて、なにをしているのか、と尋ねる。警官も、腰まで水に浸かっている。「このカワマスたちを育てるのに若松の枝をとりにゆくのです」と母親は言う。「ああそうですか。やはりそれには若松の枝が一番でしょう。」と警官は答えている。父親とわたしには全くわけがわからないが、ふたりはわけがわかっている様子である。
いつの間にか帰り道で、車で来たはずであるのに船にのっている。老婦人に座席を譲ると、相手はわたしを以前から知っているらしく、あなたの家は昔から高貴な家だ、と、とくとくと教えられる。婦人に譲った座席というのは、わたしが小学生のときに工芸の授業でつくった木の椅子だった。


街に戻っている。立川に似た、急に開発された郊外らしい道路の広く人の少ない街であるけれど現実にわたしの住んでいるところであるらしい。務めていたブック●フにゆくと、知っている店員がひとりもいず、内装も変わっている。4月1日付でつぶされた五店舗というののうちのひとつはうちの店であったらしい。潰れる店舗の人間には、その当日までそのことが知らされない。わたしは3月末日の棚卸で休職したために知らなかったのだった。あの年若い店長はどうしたのだろうか、と思う。それから待ち合わせに遅れて居酒屋のようなところへゆき、ブックオ●のバイトさんたちの送別会に送別されにゆく。正直面倒だな、と思っている。みんなで店長の不運を笑ったりする。


最後のあたりはかなり実際の事実が含まれていて現実に近い。