『マジ、自主休校して一日爆睡してたわwww』の話

木曜日、授業を諦めてべっとりと昼まで眠った。眠っては起き、起きては眠った。眠りつづけるうち布団は汗で湿っぽくなり、体温が籠ってサウナのようになり、体が熱かった。シーツと体が癒着するかと思われた。果たしてしなかったけれど。
ちょうど2限が行われている頃、わたしは夢を見ていた。雨ばかり降って街全体がぬかるんだ国、建物がすべてカマクラの雪がやまない国、太陽がじりじりと照る、昔の西部劇のセットのような国などがあって、いくつもの関所、国境を抜けて、わたしは旅をしていた。気候が著しく異なるから国境を越えるたびに洋服をきかえるのだった。国はそれぞれ小さくて歩いて抜けられる大きさで要はテーマパークのようにそういう違う次元がいくつも連なっているのだった。わたしはこの夢の中で、この夢のことを日記にどう書こうか、人にどう話そうか、と文章を組み立てていた。夢の最中に夢を自覚し、なおかつそれを記憶していることは初めてだと思う。
この季節だから眠り続けていると、肘の内側やうなじといった体の僅かな窪地に汗がたまって汗疹になりそうに痒くなる。(こういうとき汗じみた髪を掻いた指先の、自分の匂いの甘い愛しさといったらない。垢は他の垢を愛さない。)夏なのだ、と思う。子供のころはアトピー性皮膚炎のために、夏は右肘の内側に必ず汗疹が出来た。必ず右肘だった。冬は手の甲に湿疹が出て、右手で掻くから左手の甲が掻き崩れて荒れた。これらの炎症のためにわたしの皮膚の肌理は粗い。しかし成長するにつれて炎症は起こらなくなった。
こうして一日を眠ってすごすと、かえって体力を奪われる。ちょうど入院患者の筋力が衰えるような感じだ。時間を飲み込むように眠るのは久方ぶりのことだった。制服を着ていたころはひたすら机に突っ伏して眠ってばかりいた気がする。そうして10代を過ごしてしまったと思う。こういう眠り方の中で、息継ぎするように目を覚ますとき、自分はクジラのようだ。眠り方が、口を開いて海水を大量に飲んで濾して、ふっと海面に上がってくるようだ。眠るときわたしの口は大きく開く。そこから唾液が垂れて唇が必ず乾く。