音楽の夢をみた夜があった。ずっと頭の中でなにかの音楽が勝手に鳴り続けていた。その音楽は忘れてしまった。知らない音楽だった。

親指や人差し指の爪をのばして、互いの指先に食い込ませて遊んでいる、虫刺されに十字をつくる要領で。そうしていないと声をあげてしまいそうになる瞬間が、繰り返し繰り返し些細な記憶の糸口から現れる。襲い来る。やりすごしてもやりすごしてもやってくる。生活をしているだけで。それらから解放される術をわたしはたったひとつしか知らない。だからこんな生き方になっちゃうのかなあ。まだほんのちょっぴりしか生きていない。
ひとりで叫び声をあげそうになる。ひとりの部屋で自分への叱責を呟く。なんでなんでどうして死ねばいいのに死んでしまえ首をつって死ねばいいのに。などと呟く。そういうとき自分には自分がずいぶんとキチガイじみているように思われる。

うまくやれない。どうやったらうまくやれるのだろう。うまくやるしかないのだけど。やってゆくしかないのだけど。やってゆくしかないしわたしはやるのだ。

さあやらなくちゃ。