深く切られた傷というのがどうなるのかわたしは知らない。浅く切られた傷は、傷のつけられた皮膚にごく近い部分の皮膚を、しっとりと油を染みださせているチーズのような、蝋人形の肌のような見た目の質感にさせる。それは傷がつけられてから、瘡蓋が出来上がるまでの精々一日か二日の間で、傷をつけた直後よりも、翌日くらいの方が、傷口に固まった血液が鮮やかに赤黒くなるので軽く引っ掻いた程度のものであっても傷は痛々しく見える。誰かに見せるために手首を切るなら流れ出た血で傷以外まで真っ赤に染まっているときか、翌日傷が鮮やかに赤黒いときに見せるのが一番効果的だ。
あほくさい知識。
あほくさい、という言葉の持つ諦め。