これも昔の話になる

好きな人と、その人と寝ているらしい女の人と同じ部屋に泊まったことがあった。
そのひとの初対面の印象は、とてもいやだ、というものだった。
嫌ってそう思うのではなく、顔を合わせることでなにか微妙な緊張感が生まれて自分にストレスがかかるのをわたしは感じ取った。どうやら関係があるらしい、という話を聞いて、その電気はわたしが感じ取ったこともそうだけれどあちらが発していたのだろうと思った。
Yはそのひとの隣で眠った。なんの屈託もなく寝ていた。そのひとの化粧を落とした顔が白くてつるんとしていて、わたしよりきれいだった。まんじりともせず、眠る二人を見ていると、夜が明けていた。
女の人が仕事へと出た後、まだ眠っているYの手を、ひとに知られないようこっそりと触ると、眠ったまま弱く握ってきた。ひとに知られないよう、ほんのすこしだけ、そうしていた。