十代の灯

掃き溜めのように人の集まって空気の澱んだライブハウスの階段の底でうずくまり泥のように酔った。わたしはポリエステルのエンジ色のシャツに学校で着ていたラルフローレンのセーターと同じくサイズのやたら大きいピーコート、長ズボン、ドクターマーチンのブーツで男の子に見えるといいと思って下着を着けていずぐちゃっと酔っぱらった。古着屋で買ったどこかの中学の学生帽も被って。子供のにおいの残る間でないと馬鹿な格好もできなくなるだろう。だから思い切り、今は頭を悪くする。それが最後の鋭さになるかもしらん。そういう行いを、呆れられるかもしれないという恐れもなしに出来るのは、集まりの中でわたしがかなり若い方であるが故に大人たちの眼差しとしてはそんな行いも許されるだろうという計算があるからだった。とはいえ呆れられただろう。そういう酔い方をしても、帰る頃にはすっかり正気に戻っているのは、すこしの量で酔うから抜けるのも早いということだ。思惑通り見知っているひとたちはたぶん優しかった。同年代の輪に入り交じらないわたしは、大人たちの視線の下でずっと子供でいられる。
一度いろいろとお世話にもなったジョニー大蔵大臣氏がいたので写真を撮らせてもらった。緑色の照明は目に辛かったけれどかっこいい写真。掲載許可ももらった。
4月26日には、わたしの昔のクラスメイトの企画がこの東高円寺UFOクラブであって、水中、それは苦しい、バイナリキッド、神さま、Far Flance、坂本移動動物園、悲鳴だとかの良い対バンなので、けっこう楽しみにしている、失踪したわたしの友だちが最後にライブをしたとき、たしか神さまが対バンだったと言っていて少し気になっているのです。ああ楽しみ。
その、いなくなってしまった友達に唆されて、去年のちょうど今よりすこし前真夜中ザクザクと鋏を握ってスポーツ刈りにした髪は、大学へ入る頃までに女の子に見えるように戻るだろうかというわたしの心配もよそにして、黒く健やかに伸びて肩につくほどになったのでさいきんまた茶色く染めた。ただ髪の表情が最も美しく出るのはやはり黒髪だと染めてから思った。また、黒く染め戻そうか。とはいえ脱色だってしてみたい、ピンクベージュにしてみたい、明るい茶色にしたい、そういう気持ちもあって、髪をとっかえひっかえ出来ればいいのにな。カツラはあるけど扱いづらい。
長く伸びてパーマをかけた髪は、下を向いて顔を隠すと、女の子というよりかえってお洒落な男の子のようだ。だからしばらく、ライブハウスへゆくときは、男の子のふりして行こう、母親のNEWYORKERのいいジャケットの時代に遅れた厚い肩パッド取り除いて着てみたり、わたしは少年のように見られたい。