水色の学ランを着た男の子たちが、新宿や渋谷といった繁華街で幅をきかせている。自分の学校でもちらほらと見かけるので、どうやらうちの生徒らしい。
小学生のころ仲のよかった女の子の弟のnがその組織の構成員になっていて、わたしは乱暴で力の強い彼に、一応先輩として認められているので、彼らに危害を加えられる恐れはなく、そういうわかりやすさのある彼らに、けっこう好ましさを覚えている。彼らは、「○○会」という、漢字三文字の豪華な名前を自分たちにつけている。わたしの学校の制服はブレザーなので、正装としての水色の学ランとは別に、白いジャケットを軽装として着ていることも多いようだ。
彼らはいわば現代の戸川純だよ!露骨な、不格好なわかりやすさを避けがちな今においてあんなにわかりやすいなんて!好ましい!すばらしい!とわたしは友達に語ったりした。
学校が秋葉原にある。(景色は世田谷美術館の近くに似ていた。)なのでわたしは帰りに、漫画本を取り扱う類の古本屋へ寄ったり、ゲームや家電を置いている店の中を通ったりして帰っている。ひとつの大きな建物がJRの駅になっていて、それが蟻の巣のようにあちこち内部で繋がっている。ややこしいが、慣れれば雨に濡れずに帰ることができる。
クラスメイトの、わたしがとても大好きな可愛い女の子・fと一緒に帰っていると、彼女は地下道から潜って駅のあるビルまで行こうというので、そうする。地下道で、彼女の親戚一同が会食をしているらしく、彼女はそこでお別れすると言っていた。行くと、地下道は高級そうな料亭の廊下に直接つながっていて、座敷にひとがあふれ返っている。入り口近くには彼女の両親と姉たちが受付をしていて、たくさんのひとに挨拶している。彼女は遅れたのを怒られながら、そこに入っていった。座敷の中では、葬式のあとのようにたくさんの正装のひとたちが楽しげに飲み食いしていて、このひとたちがみんな彼女のことを、ある程度いとしく思っているのだと思うと、親戚の少ない自分は羨ましかった。
その地下道を抜けるところには薬局があり、ひとがたくさんいるなかを、おしのけおしのけしてそこまでたどり着くと、白いジャケットの○○会たちが何人もいて、通せんぼしていて、わたしは勢いあまってそのなかのひとりにぶっつかった。しかしそれは、件の友達の乱暴者の弟・nだったので、「こうやってひっかかったやつはろくでもないやつだからしめとけってtさんにいわれてんスけど、aさんならまあいいっすよ!」と通してもらう。確かに後ろには何人かの白いジャケットの構成員をあごでつかうtの姿があった。昔はあんなに弱気でいじられていた君なのに、とわたしはちょっと面白かった。彼は頭がいいんだろう。
目が覚めるまで現実だと思っていて、わたしは水色の学ランや白いジャケットの彼らが、本当に好ましかった。