さよなら宇宙時代

家のメダカが続々と卵を産んでいて、それが次々と孵化する。
母親はこれを喜んで、子メダカたちを別の容器に分けて育てている。
大きな金魚鉢を上からのぞくと、3mmか5mmくらいしかない魚たちがたぶん数十匹、滞空するハチドリのように胸びれだけを細かく動かしてぼうっと泳いでいる。
なにか震動があたえられたりして驚くと、ピュンピュンとすこしだけ慌てる。
両親が川で調達してきた藻に卵がついていたらしく、変わったタニシも鉢の中で発生していて、それが水中を泳いでみたり、藻に絡まってみたり、けっこう素早く動くのでそれも見ていて飽きない。
殻のかたちがカタツムリのような巻き方なので、なかなか可愛らしい。
子メダカたちは顕微鏡で覗いた精子みたいだ。
実物をみたことはないけれど。
大小それぞれがぼうっと水中に留まっているのをみると、金魚鉢の中は宇宙に見える。
メダカたちが宇宙船の艦隊に見える。
だから、宇宙戦艦ヤマトだとか、スターウォーズだとかのような宇宙。
死んだ魚は、だいたい金魚鉢の中の藻に絡まってふやけて、シラスにそっくりになっている。
二つの目だけが黒い。
まだ孵化していないメダカも、卵の中で目だけが黒い。
それで視認できる。
泳いでいる魚はふやけないのに、死んだ魚はふやけてしまうのが気になる。


試験前だというのに、ゲストで入れてくれるというので高円寺純情商店街のライブハウスへ、知人のライブを見に行った。
ひとつめのバンドの方々の演奏はとても迫力があってかっこうよかったのに、イケメンのドラマーの方が演奏が白熱するにつれて大きく口を開けて、スクリームのような顔になってゆくのが面白くて、笑いが止まらなくなってしまったので表へ出て煙草を吸っている知り合いたちと話していた。
fの紹介で会った方々には、本当に親切にしてもらっている。
会話の中でfと年齢の差を感じることはなくとも、fと同じくらいの年齢のお友達とお話などすると自分の年齢を思い出す。
そのせいもあって、いつもつい、子供気分、お味噌気分が抜けない。
自我の確立、けっこう切迫して求められている。
自立したいなー、なんて悠長に言ってそれを免罪符にして遊んでいられる歳でもなくなってきたのね。
試験が過ぎたら、新宿ゴールデン街は奥亭へ、ジョン(犬)さんに占ってもらいにゆく。
自分ではもう収拾がつけられない。
仲良しのまりこが、下北沢でお茶していたときジョンさんにこの間占って貰ったと言っていて、すっきりとしたようだったので思い当った。
そういえばそのお茶のときまりこが、「わたしは弱いから」と何度か繰り返したのが鋭かった。