Uターンするひとはこわい

街中で急にUターンするひとを見るのは怖い。明らかな目的をもっているような足取りで、足早に歩いているひとが急に身を翻して元来た方向へ同じ速さで戻ってゆくのを見るのは怖い。外側からみているそれには脈絡がみえない。だから怖い。リモコンで動いているものにみえる。
またO脚やX脚の足の曲がった女のひとがヒールを履いて歩いているのをみるのも怖い。どうしてバランスを保っていられるのかわからないくらい、靴を体の外側に傾かせて歩いている。後ろからみるとよくわかる。あのバランスは危うい。妖しくもあって、その足元だけ妙にセクシャルな感じをさせて独立した生き物にみえて怖い。
楽しげに話していた人たちが笑顔で別れてその瞬間黙って真顔になることが怖い。
絵文字がたくさんのメールをつまらなそうに打つひとがこわい。
語尾のwのキーを笑わずに連打するひとがこわい。
プリクラ機のカメラに笑顔をつくるひとがこわい。
背後霊がいたとしたらこういうこわいものをすべて後ろからみているからかなしい。
背後霊と書いて、都市伝説を思い出して、夜道を、いきなり全速で走りだしたり、歌いだしたりするわたしの姿はこわい。