鏡の前に立つ

風の日の犬はうれしい

犬の散歩へでたら、みたこともないくらい大きなカブトムシの幼虫(推定)が道路にはだかで落ちていた。かわいそうに思ったので、拾ってかえって、仮にマーガリンのいれものに土をいれて養っている。
小学生のころは、父親ととってきたカブトムシを、自宅で繁殖までさせたわたしです。近所の農家の方へ頼めば、いくらだって堆肥や朽木はわけてもらえる。
横浜とはいえこの近所は田舎だ。近辺の家は農家以外だいたいが十年の内に建ったものだし、墓地の近くはあからさまに空き地が目立って、そこを通る時地蔵のかけている前かけが妙に赤く目につく。風が吹いている日、犬はうれしそうにあるく。
かえってきた父親は、虫をみて、外国産じゃないか?と言っていた。
短くした髪の毛がすこし伸びてきたのを感じる。手を加えなければこれは傷みもせず素直に伸びてゆくのだと思うとうれしい。男の子のような髪になって眉も生やして、虫を拾ってはしゃいだり、自分はまるで処女のようだなと思う。
しかしわたしは自分のできることを知っている。
虫のために今夜は音楽をかけず静かに過ごす。