自分の信念に反して伸ばしてきた眉毛がいい加減鬱陶しい。恋人も眉毛のあるのがいいと言うし、一般的には眉毛のある方が良いのだろうけど、のれんのように揃えた前髪の向こう側から眉毛が透けるのがいやで仕方ない、毛の生えている感じも気持ちが悪い。眉毛を描くとしても多少は自前の毛が生えていないとなんとなく不自然になるし、やっぱり前髪の向こう側からちらちらと眉毛はのぞくことになるし。恋人に会うときとバイトに行くときだけ不自然でも描くことにしてまた剃ってしまおうか、短く薄く整えるに留めるかとても悩む。
感情の見えづらい顔というのが好きで、眉毛がないと、随分表情は見えづらくなる。爬虫類のような顔には生臭さが無い。ある種の下卑た生活感とでも言うべきものがとても嫌いなのだけれど、それが具体的にどういったものなのかというのはとても説明がしづらい。
わたしは出来れば鉱物のようでいたいしキャラクターでいたいしある種の記号を持って安心していたいけれどそれってとても難しいことだ。


たいしたことはないだろうと霧雨の中を犬の散歩に傘もささずに出たら、帰るころには髪がしとどに濡れて、目の下にクマをつくったわたしはいかにも不幸そうに見えた。眠りたいね。