学校へ向かう時間は、空気が生温く澱む前で、とても良かった。光るくらいに澄んだ空気に白い息を吐きながら外を歩くのはとてもいい気分で、これから一週間難なく切り抜けられるのじゃないかとさえ思った。けれど教室へ一歩入ると、埃っぽい生暖かい空気と歓声にすぐにぐんにゃりと力が抜けてしまった。
教室の中でわたしの言葉は意味を持たない。だれにも伝わらず、気がつかれず床に落ちて転がっている。
バイト先ですこし傷つくようなことを言われたけれど、夕方からしていた動悸に懸念を抱いて、別れたひとがくれた鎮静剤の最後の2錠を飲んでいたので、落ち込むよりもむしろ腹が立った。
腹を立てるだけのエネルギーのある自分に、すこし驚いた。
先週保健室の先生に相談をして、カウンセリングを受けることを決めて以来、すこし落ち着いている。髪の毛を抜くことも少なくなったし、なによりまた食事がおいしくできるようになったことが嬉しい。
動悸がしはじめたのは、ひとりぼっちだ、と考えついてから、急にだった。
わたしはもう、まったくひとりぼっちだ。
特別なおくすりもなくなってしまった。
どうしようもなくひとりぼっちだ。
心がどこにもつながっていないことの、この恐ろしさよ。


キスをされても頭をなでられても、何処かへ帰りたいと思っている。