限界

帽子を買わないと、いよいよ髪が薄くなってきてしまった。居間の床に髪の毛を散らばらせていたら、母親はそれをみつけて、汚い、片付けておきなさい、というようなことを言った。異常なことをしていても、異常であることに焦点を合わせてもらえない。過食はばか食い、といって叱られる、過食嘔吐をしていた時には、吐いている最中、自分の健康管理は自分でしなさい、と言われ、壁に頭をうちつければきちがい、家を壊すな、手首を切れば、みっともない、やめなさい、早く治しなさい、あなたは祖父たちの希望なのだから、。
わたしは、話を聞いてもらいたいだけだ、向き合って一人の人間として会話がしたいだけだ、素直にそう言っても、わたしの言葉は通じない。
ちいさいころは母親が世界のすべてで、絶対的に正しく、わたしの味方だった。母親が誤っているときだってあるのだと気が付きはじめたとき、ちいさなわたしの世界は新しいものになったのに、母親は断固として未だわたしに幼児に対するのと同じ「(全能で正しい)母親」の姿勢を取るのでうまくゆかなくなる。わたしは母親の思い通りにならなくなり母親はわたしの味方でなくなる。


社会的に立派な人間になれないことにはわたしの価値は全くないんだ、すくなくとも母親にとって。わたしの好きなもの、得意なこと、すべてに価値はなくまともな人間になることだけを求められている。つまりまともになれないわたしは無価値で死んだらいいのだ
いまさらなにを言われても白々しいとしか思えないだろう。
一刻も早く、母親から離れて暮らしたい。そうすればすくなくとも、今よりかすこしは平和な生活が送れるだろう。
すこしずつ追い詰められる。ひび割れてゆく。また破裂してしまう。腕を切り刻む夜。こんな娘でなければ良かった。