憧憬

ふと、いつのまにか、あの子のにせものになってしまったことに気が付いた。
むかしむかしのはなしになったと思っていたのに。
あのこがいまは下北沢の学校に通っているとか、そんなはなしはきくけどみんなうそみたいだ。
新宿へゆくとき通り過ぎる駅でときどき思い出すよ。
わたしはこの先、あのこに会うことはないだろう、という確信を感じる。
それでもまたわたしは出会ったりするのかな。
わたしのことを露とも思い出さずにあのこがあのままにいてくれたらいい。