試作1


「今月に入って、もう41人になるな」

「膨れた赤ん坊かい」

「そうだよ」

「近ごろの親は子供に息の吐き方を教えないからなあ」

「あいつら自分で破裂しちまうんだから、可哀想になるよ」

「助かっても、初めて息を吐くときの叫び声ったらないね」

「ああ、ほら、窓の外をみてごらんよ」

「今日のはやけに高いなあ」

「これで、今月は42人目だねえ」


(窓の外には丸く膨れた赤ん坊が手足をばたばたさせながらいくつもいくつも家々の煙突から浮かんでいる、彼らには紐がつけられている。彼らが膨らんで地上に留まれなくなってしまったら、両親はしっかりと紐に結んで煙突から空に浮かべるほかない、赤ん坊ひとつひとつの紐の先には息の吐き方を教えるということさえ思いつかない夫婦がふたつ結ばっているのだ、彼らは心配そうに眉を寄せて、お互いの手を握り締めている。)